真冬の湯巡り、渋温泉

シゴトを辞めてヒマになったので、さっそく旅に出ました\(^O^)/

前勤務先は休むことに関してケチくさい会社で、1週間ほどの旅のために休暇をとった際(業務に支障が出るわけでもないのに)イヤミを言われて以降、2日以上の連続休暇の取得は控えておりましたのよ。こんな会社は「働きにくい会社」として淘汰されてなくなってしまえば良いと思います。そして、ニホンのみなさん、もっと平日にお休みして観光地を潤すべきだと思います。

というわけで、平日の観光地を潤すために、かねてより行きたいと思っていた長野県の渋温泉に行ってまいりました。

渋温泉

渋温泉といえば、九湯巡りが有名です。源泉を引き込んだ共同浴場を宿泊客にも開放しているもので、九湯全てを巡ると満願成就となるのだとか。こういうイベントめいたものはツレがいたほうが絶対楽しいので、旅行大好き女子のKさんを誘ってみました。幸い直近に平日二連休取得できる日があるとのことだったので、お付き合いいただくことに。

筆者は旅先では「なんにもしない」時間をのんびり過ごしたい派なので、一日前に出かけて余分に一泊することにしました。

記事中の写真の殆どは、Kさんが撮影されたものです(とってもマメなヒト)。

なんか趣のある建物

旅館組合に加盟している宿に宿泊しないと九湯巡りはできません。Kさんと一緒に過ごす二泊目にそういうトコロを予約してあったので、一泊目はうんと節約してホステルに素泊まりすることにしました。

ホステルと言っても、以前は旅館を営んでいた建物を使用しており、設備は古いものの源泉かけ流しの内湯がありました。すでにこのお湯で、すっかり温泉を堪能!もうコレで帰ってしまってっも良いと思ったくらいです(言い過ぎ)。

渋温泉の「の猿ホステル」
石畳の道の温泉街
カオナシが千尋になにかあげている場面
温泉卵(*´∀`*)

素泊まりなので、一人旅のヒトを誘って居酒屋に行こうかなーとでも思っていたのですが、手頃な一人旅のヒトが見つからず、結局ひとりで行くことに。「メニューがない」ことで有名な居酒屋「ちょっくん」へ行ってみました。

開店直後だったためかホカのお客さんがおらず、さみしいカモ!と一瞬怯みましたが、週末だけお手伝いに来ているというおねえさんがいらっしゃって、ちょいちょい話し相手になってくださいました。(その日は連休の最終日だったのです)

居酒屋ちょっくん
「ちょっくん」の隣の広場には、お魚がいっぱい

そのうちホカの旅人もやってきて、ソコソコ賑やかになりました。この日のお客さんは外人さんばかりでした。ニュージーランドから来たという、アジア系の若いカップルから日本旅のお話をきいたりして、たいそう楽しかったです。気候の良いニュージーランドから真冬のニホンにわざわざ旅行にやってくるというその気持ちは、さむがりの筆者にはまったくもって理解不能ですが、とても楽しんでいるようでした。

アテは、お客さんの様子を見て、ご主人が適当に出してくれます。お腹が空いているヒトにはうどんがたっぷり入った鍋料理が出てきたり。お勘定はどうするのかと思っていたら、「何杯呑んだ?3杯?じゃ、2000円ね」と、かなりテキトー。お腹いっぱいごちそうになれて、しこたま飲める、かなりリーズナブルな居酒屋さんです。また行きたい(#^_^ #)

小石屋旅館

朝食は、別のホステルのカフェへ行って食べました。古い温泉街にはめずらしいオシャレなカフェを併設するホステル「小石屋旅館」です。ココも古い旅館を買い取って営業しているようですが、かなり綺麗にリノベーションしてあります。本当はこちらのホステルに泊まりたかったのですが、一人旅のヒトが泊まれるドミトリーは男性用しかなかったので、泣く泣く諦めました。

せめてカフェでも利用したい!と思い、Kさんとの合流場所にしようと目論んだのですが、平日は昼間のカフェ営業はないとのこと…(O_O) 渋温泉の旅館は15時チェックインのところが多いのですが、それより前に到着してしまうと、落ち着いて休めるところがホボないようなので、小石屋さんのカフェは数少ない貴重な場所だったのですが…

おみせに侵入を試みるおさる

だからほら、ニホンのみなさんが平日にお休みを取って観光地に来てくれないと、こういうさみしいことになっちゃうワケなのですよ。Let’s休暇はバラけて平日にがんがん取りましょう!取らせてくれない会社なんぞ、辞めてしまえばいいのです。

朝食の時間帯の営業はしていたので、バゲットサンドの朝ごはんを食べてきました。ドリンクは各種飲み放題なので、ホンを読みながらゆっくりさせてもらいました。サンドイッチは美味しかったのですが、お値段にしてはちょっと量が少なめかな…。育ち盛りの男性のみなさんにはかなり物足りないカモ。

小石屋カフェのフルーツサンド
旅館をリノベーションしたホステル、小石屋旅館
小石屋の朝食メニュー
1階のカフェは、かなりオシャレにリノベーションされている

九湯巡り

お昼すぎにKさんと湯田中駅で落ち合い、温泉街を散歩した後、旅館にチェックインして早々外湯巡りへ。浴衣で湯巡りは寒いのではないかと心配していましたが、羽織に加えて丹前も貸してもらえたので、さっと巡るには十分暖かかったです。そして滑り止め付足袋ソックスもついておりました。これで浴衣に下駄の扮装で湯巡りが可能に!

そして、フロントで満願成就手ぬぐいを購入。コレに各浴場でスタンプを押していきます。押し方見本を見ていなかったので、なんだかビミョウな位置に押してしまいました。筆者は、買ったものは使う派なので、スタンプが消えてしまおうと手ぬぐいを日常的に使用しようと思っておりましたが、さしあたり、一回洗濯した段階では消えていませんでした。

浴場に置いてあるスタンプを押してゆくと出来上がる、満願成就手ぬぐい
九番湯 大湯
子宝の湯は2箇所くらいあった気がする
風情のある建物 三番湯 綿の湯
配管がスゴイことになっている

渋温泉は源泉の温度がとても高く、しばらくヒトが入っていない浴場は、湯船に入れないほど熱くなっていることがあります。水を入れてぬるくしても良いのですが、自分が上るときは必ず水を止め、源泉の注ぎ口を全開にしておくのが決まりのようです。ほとんどのお風呂は少し水を足したら入れたのですが、二番湯の笹の湯のみ、ちょっとコレはむりそう…と諦めて、かけ湯だけして上がってきてしまいました。

それにしてもお湯が熱いので、浸かっていられるのはせいぜい五分ほど。一泊で満願成就を目指すなら、夕飯前に3回・夕飯後に3回・朝3回と分けて入るのがよい、とのことでしたが、それぞれの滞在時間が短いため、結局夕飯前に7箇所巡ってしまいました。

旅館の内湯も多数あり、ドレにも入っておきたい!!!と欲張ると、大変忙しいことになってしまいます。のんびり過ごすには、同じ旅館で2泊したかったなー、と思いました。

金具屋旅館

さて、2泊目のお宿は、渋温泉といえばここ、というくらい有名な金具屋旅館です。「千と千尋の神隠し」の湯屋の建物に雰囲気が似ているとのことで、ファンの方々が旅館の中で撮影会を行ったりもしているそうです。スタジオジブリから公式にモデルにしたと言及されているわけではなく、ホントのところはわかりません。

昭和初期に建築されたという木造4階建ての「斉月楼」と、部屋の中に柱が一本もない200畳の「大広間」は登録有形文化財となっており、とりわけ斉月楼の方は、現在の建築・耐震基準に於いては営業許可が出ない作りなのだそうです。すなわち再建して営業することは二度と叶わない貴重な建築物なのです。

金具屋旅館
部屋の途中に柱がない大広間
水車の部品が壁の装飾に
水車の歯車の障子窓
天井部分は青空色の廊下。かつては商店街風になっていて、売り子さんが立っていたそうです。

木造建築というのならば純和風建築家と思いきや、西洋の技術(トラス構造等)を取り入れてもいるそうです。また、純和風建築にはなかなか見られない、モダンな装飾・遊び心のある装飾が随所に施されており、宿の中を探検するだけでもうエンターテイメント。夕食前に行われた館内ツアーで、9代目(予定)が建物のこのような魅力をくまなく案内してくれました。

面白いのは、客室それぞれを一軒の家と見立て、各入り口に屋根のようなものがついていること。それぞれの屋根は農家風だったり町家風だったり、一つとして同じ形はありません。また、客室の間の廊下は「屋外」という見立てになっており、渡り廊下の天井が青空色に塗られ、街道であるかのように演出されています。

時代を経てイロイロな建物を継ぎ足していき、外側から金具屋旅館全体を眺めるとつぎはぎ感が否めないのですが、建物内部は渡り廊下でシームレスにつながっています(でもちょっと不自然)。建物探検だけで半日は過ごせそうなお宿なのです。

斉月の湯

金具屋旅館には、内湯が8つもあります。そのうち5つは家族風呂で、空いていれば内側から鍵をかけて個人で専用利用できます。「ちょっくん」で働いていたおねえさんに、つい最近リニューアルしたばかりの「斉月の湯」という家族風呂があると聞いていて、ソレにはぜひ入ってみたいと思っていました。

若いアーティストの女性がデザインした図柄で壁や床のタイルをすべて貼り直し、それはそれは綺麗に化粧直しをしたお風呂。「ちょっくん」のおねえさんもタイル張りを手伝ったそうです。人気のお風呂のためか、なかなか空いていなかったのですが、夜中に通りかかったとき覗いてみたら、鍵が外れているではありませんか\(^O^)/ 外湯9つコンプリート、内湯にも2箇所入って湯あたり甚だしいカンジではありましたが、このチャンスを逃すものかと中年女子二人は湯船に飛び込みました。

湯船の形はまさに舟形で、他の家族風呂に比べると大きめ。じつにゆったりと浸かることができました。

ちなみに、このお風呂のみ、写真を撮って公開して良いということになっておりました。

お風呂に入りきったら、ゆたんぽに温泉のお湯を入れてぐっすり眠りました。

唯一の心残りは、源泉ツアーに参加できなかったこと。朝食後、宿が所有している源泉2箇所に8代目当主が案内してくれるというものなのですが、まだ入っていない内湯にも入りたいし、「なんにもしない」時間も堪能したいし、やりたいことがありすぎるので、Kさんと相談の上、泣く泣く諦めました。次の機会があったらぜひ参加したいです。

ゆたんぽ
ステンドグラスのランタン

地獄谷温泉のおさる

旅館をチェックアウトした後は、外国人に大人気の地獄谷温泉野猿公苑へ。最近は「スノーモンキーパーク」と呼ばれているそうな。

野猿公苑にはずいぶん昔に一度行ったことがあり、その頃からまー外国人には人気があったのですが、その後あまりの人気ぶりに周辺施設があちこち整備されていた感がありました。必ずしもバスの便が便利な場所でもないのに、それを待つ場所すらなかったところへ、需要を察してカフェやスノーシューズのレンタルを行うギフトショップを設置したヒトが現れたそうです。同じ系列と思われる飲食店が最寄りの鉄道駅である湯田中駅付近にもできていました。

古い旅館をリノベーションしたり、観光客が過ごしやすい飲食店を作ったり、都会からこの地にやって来てベンチャーらしきことに手を染めている若いヒトビトが少なくないのだそうです。

上林温泉付近のカフェ
野猿公苑入り口。ココでスノーシューズを借りられるみたい。
温泉に浸かるおさる
温泉に浸かるおさるに群がるヒトビト
うーん…

それにしても、なにゆえコレほどおさるが人気なのか…。訪問客の殆どは欧米人。大型観光バスでやって来ては、どっかどっかとなだれ込んできます。極寒の真冬の長野に。温泉に浸かるおさるが珍しいというのも勿論あるかと思いますが、彼らにとっては野生のおさるそのものが珍しいみたいですね。下北半島のおさるが北限のサルと呼ばれていることからわかるように、ヨーロッパには野生のおさるはいないのです(北米大陸にもいないそうです)。

以前、外国人の知人と京都で会ったとき、さあ今から嵐山へいくよ!と言ってまず連行されたのは嵐山モンキーパーク。たいそうなお山を汗だくになって登っていった先には、餌におびき寄せられた野生のおさるたちがいて、で、訪問客はまたしても欧米人のみ…。え京都に来てナゼサル山に?ていうか、ナゼここにサル山が?と謎に包まれまくった経験となりました。

湯田中温泉

湯田中温泉プリン本舗

おさるとの対面が終わると、いよいよ旅も終盤です。一旦渋温泉へ戻り、歩いて湯田中駅へ。その途中でたまご屋さんが経営するプリン本舗のソフトクリームをいただきました。プリン味のソフトクリームって…プリンもアイスクリームも原材料はホボ同じなので、卵多めとか、牛乳多めとか、そういったカンジなんですかね?

湯田中も渋温泉と同様の温泉街で、宿泊客が共同浴場を利用できるシステムのようなのですが、渋温泉と比べると寂れた感もあり…。気楽に入れる飲食店は湯田中の方が多いので、お昼に湯田中についたらココで食事をし、お散歩しながら渋温泉に向かうのがよいですね。

プリン味のソフトクリーム
湯田中温泉街の中華料理屋さん
スキー板で作ったベンチ
雪猿缶

最後は長野駅で、長野名物七味唐辛子雪猿エディションを買いました。両親へのお土産ですが、あろうことか、実家ではちょうど七味が切れていて、ハハが買い物に行っても見つけられずすごすごと帰ってきたところにコレが届けられ、渡りにフネだったとのことです。

二泊三日の短い旅でしたが、Kさんのお陰もあって濃密なモノのなりました。夜勤明けで参戦した彼女はすこし辛そうでしたけども…